山間部での井戸掘り

 
山間部での井戸掘 りの実例
2005.7.30〜2005.8.12   
土 質:泥岩および泥岩の前の段階の岩盤(表 層は約3メートルの軟弱地層)  
掘 削 30.0メートル
場所:旧下田村鹿熊

こ こは水道もなく井戸もな い、山奥から流れ出る沢水がたよりの山の中の一軒家です。風呂は窓越しに裏を流れる沢水をポン プで引き込むのですが、渇水期にはそれも流れてきません。飲水はペットボトル でわき水を汲んで きます。こんな生活を2年も続けてきました。なんとか水が欲しい!・・・実は私が掘る前にポンプを 使う手堀(水圧掘り)の ベテランが掘ったのですが、硬くてさじを投げたの でした。それで私 に声がかかったわけです。自宅からの距離が45キロもあるので躊躇しましたが、水のない生活を している方の話を聞いて掘る事を決意しました。尚、井戸掘りに使用した機械に 関心の有る方はカタログをご請求ください。この現場で使用した井戸掘り機は製 造終了しました。

 カタログを請求


井戸掘りの現場は三条市だがこの 冬は2メートルも雪が積もった山奥です。現場の200メートル手前の 崖は岩がむき出し状態です。ここから高低差で20メートルくらい上った少し小高い場所です。


これが今 回の井戸掘りで使用した ビットです。このビットは軟弱層から軟岩まで対応した比較的オールラ ウンドなビットです。先端部には超硬チップがろう付けされていて、耐久性は抜群です


ここが井戸を掘る場所です。水を 溜める穴を掘ります。


約30分で穴を二つ掘りました。 炎天下、休みながら掘ったので少し時間がかかりました。コンクリート のくずがあり少し難儀しました。



この地域は泥岩、あるいは泥岩の 手前の状態の大変硬い岩盤なので真水から始めても大丈夫なのですが、 掘った穴の水もちが悪いのでベントナイトとポリマーを使用しました。


掘り進むと水は粘土を溶かすので だんだん濃くなってきます。どろっとしたら水を加えて薄めてやる必要 があります。濃いとポンプに負担がかかり水の循環が悪くなります。ねばりのある水の方が掘り屑は上がり やすくなりますので、バランスが大切でありここが勘所でもあります。


穴の底には泥がたまります。一定 量たまったら取り除いてやります。硬い岩盤も削っていくとこんな泥に なります。3メートルまでは表土で軟らかい地層ですがその下は硬い岩盤です。10メートルくらいまでは 1時間で1.5メートルは掘る事ができましたが、堀り進むにつれ硬くなり1分に3 ミリ しか進まなくなり ました。1時間で18センチ位です。幸いこの硬さの岩盤は一部で、多くは1時間で30センチは進む事が できました。平均すると1分で1センチは掘り進む事ができました。平野部ではたい てい は1分で7〜8セ ンチは掘る事ができますので硬さを想像していただけるものと思います。


30メー トル掘ったところで水の 循環が悪くなりました。原因は粘土がビット先端の水の出る穴の一つを 塞いことでした。先端に挟まった泥岩が膨張した可能性もあります。当初の予定が30メートルまでということもあり、また水が出る気配があったので今回はこ こで井戸掘りを終える事にしました。ビットの交換の 必要がある場合はロッドを全て引き上げまた接続して下ろす必要があるのでけっこう時間がかかるのです。 石油掘削などは何千メートルも掘るので、掘る時間よりもビットの交換の時 間の方が多い くらいだそうです。


泥水を抜 くと穴の中はこんな状態 です。普通は砂もたまるのですが、ここは全て粘土系の泥で、砂は出ませんでした。地下 水が出るとすると、おそらく岩盤と岩盤の間の隙間の様な部分を流れる水で しょう。この 後デジカメを水浸しにしてしまい写真が撮れなくなりました。


デ ジ カメを買いました。写真は完成までいっきに飛んでしまいました。

井戸は完成しました。水量はそれ程多 くはありませんが、生活に利用するには十分です。簡単に計った数 字ですが1時間で2トンは出ると思います。自噴しますので浅井戸用ポンプで大丈夫です。鉄分はありませ ん。一ヶ月くらいしたら水質を検査してもらう予定です。


水質検査の結果は飲用に適するものでした。山中であり、手堀の井戸 と比べて深いので、たぶ ん汚染はな いだろうと思っていましたが、期待通りでした。井戸掘りの依頼者の方も大喜びでした。


追伸

翌年の12月の末頃に井戸の様子を見に行きました。 すでに雪が2 メートル位積もっていました。その後降り続きましたのでもっと積もった事でしょう。井 戸のパイプの周囲は地下水のために融けて空洞化していました。



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